第11章 ◆人と家族
「 的場・・・、何故その事を。」
「 貴方が祓い屋を辞め
祓い屋を総括する事になった時
即座に気付きましたよ。
妖力が消え、妖が見えないのだ、と。
貴方のように廃業になった祓い屋は
幾つも見てきていますから。」
ゆっくりと
スーツのジャケット内ポケットへ
手を深く入れる健司の問いに
的場は臆する事無く
いつもの口調で冷静に答える。
当たり障りの無い
緩やかな表情の中の瞳は
一切笑っておらず
その視線は健司から外す事はない。
「 あぁ、そうだ。
お前の言う通り僕には妖力が無い。」
的場の視線を受け、
健司はふっと鼻で笑うと
観念したかのように話した。
「 元々妖力なんて無いんだ、僕には。
・・・僕の妖力は、
修行で得たものだ。
祓い屋なんてものを生業にしていた頃も
この妖力がいつ消えるかと怯えていた
さなの存在を知るまでは。」
「 ほう、
彼女を見つけ
良い獲物が居た、と。
・・・術が完成すれば、
妖力が戻るとでも?」
「 そうだ。
妖力なんてもの、
消えればまた作れば良いのだ。
的場、お前には分からないだろう
この術の本当の意味を・・・。」
健司はぐっと歯を食いしばり
スーツのジャケット内ポケットから
ナイフを取り出すと
赤黒く染まった刃先を的場へと向けた。
「 ・・・分かりたくもありませんね。」
「 そうか。
・・・それなら、お前も此処で消えろ。」
揺るがない的場の視線と口調。
その的場の言葉に
健司はまるで予想通りのようだと返し
その場を踏み出した。
そのナイフを的場の首元目掛けて。
ーガキッン・・・!!!