第11章 ◆人と家族
「 なん、だ?この布は。」
恐る恐る拾い上げたその真っ白な布。
健司が手に取った瞬間に伝わる
まだ少し温かい事から瞬時に推測する。
誰かの物か、
若しくは誰かが着ていた・・・物・・・!
「 !」
それは、
術の直前に妖の血を替えに来た
的場の部下が身に付けていた白装束。
健司はハッとし、上を見上げるが・・・
「 ・・・何も、無い。」
天井には霧の影響で出来た染みと
健司が倒した椅子の衝撃で
飛び散った妖の血が数滴あるのみだった。
天井に向かい上げた顔を下げ
はぁ、と溜め息を零して
再度、自身の手の白い布に目を向ける。
その時、
「 ・・・見えませんか?」
「 っ!?」
背後から掛けられる一つの声。
その聞き慣れた低い声色に
健司は瞬時に振り向いた。
「 ・・・的場、
お前の仕業か。」
キッと視線を鋭くさせ、
睨む健司の視線の先
相も変わらずしっとりと話す
その人物は的場本人。
「 ふふふ・・・
見えないのでしょう、貴方には。」
全開に開けられた扉の前で
腕を組み立つ的場は
健司の鋭い睨みにびくりともしない。
それはまるで慣れているようだった。
「 ・・・何の話だ。
さなを何処へやった。」
手に持つ白装束をパッと離し床に捨てると
健司はスーツの内ポケットへ手を入れる。
「 無駄ですよ。
此処にさなちゃんは居ませんから。
・・・まぁ
仮に、妖と成ったさなちゃんが
此処に居たとしても
貴方には見えないでしょう。
妖力の無い、貴方には・・・ね。」
不敵に笑う的場の声色は
部屋中を静かに響かせた。