第11章 ◆人と家族
「 ・・・さな?」
ひらり、と健司が手にしていた札が
静かに落とされる。
舞うようにして床に着地する札は
ピタ、と赤く染まる。
・・・それは、床に一面に広がる妖の血。
その札に構うこと無く
パチャンと音を立てて
その場から駆け出す健司は
陣中央まで飛ぶように移動した。
「 さな、
何処だ・・・?
何処に居る!」
カタン、と陣中央の椅子を掴み
健司は勢いに任せて椅子を倒す。
その拍子にするり、と紐が散らばった。
それは先程まで
さなを椅子に縛りつけていたもの・・・。
そう、
健司の目の前には
椅子と紐が残っているのみで
さな本人の姿は何処にも無い。
「 さな・・・何処だ。
出てこい、今すぐに。」
部屋中を見渡し声を上げる。
しかし、シ・・・ンとしている室内に
妖の気配は微塵もない。
健司はフルフルと
握り締めた拳を震わせた。
嫌な予感が脳裏を過ぎる。
ー・・・まさか、
・・・まさか、まさか、・・・!
嫌な汗が額に滲み、
一筋となりフェイスラインを伝う。
「 ・・・し、・・・
・・・失敗・・・
したのか・・・?」
声をも震わせ呟いたその言葉には
室内に響く程の強さは無かった。
「 そんな・・・」
陣の回りを覆う霧は
靄となり消え、
床に広がる妖の血は
黒く変色しかけている。
その中に立ち尽くす健司。
「 嘘だ・・・。」
視線を足元に落とす。
その瞬間、
ふわり、と上から落ちてくる
・・・真っ白い布。
それは健司の目の前の足元に落ちた。