第11章 ◆人と家族
健司が言葉を続けようとしたその時、
ヒュー、という音と共に
陣全体を覆う霧が徐々に落ち着きを見せ始めた。
「 ・・・そろそろ、終わるか。」
健司は切り替え
式を契約する際に用いる札を
二枚取り出した。
「 ・・・こんなもの、
不要に越した事は無いが
万が一の為だ。
許せ、さな。」
健司の式の契約。
それは、
お互いの首にお互いの血液で札を貼る。
妖力が強ければその札は消え、
契約が成立する、というものだった。
しかし、
今から行う契約儀式の対象は
紛れもない元身内。
健司は
手に持った札を暫く見つめ
破れない程度に握り締めた。
「 新しい世界だ、
期待していろ。」
ぐっと拳に力を入れた後
その腕を下ろし、顔を上げ
低速している陣の霧へと目を向けた。
ヒューヒューと未だに鳴る音が
霧を鎮めている合図。
陣全体に伸びていた妖の血も
薄らと見える程度に減っていた。
「 もう少し。」
霧が薄くなり、
陣全体を取り巻く風も
穏やかになりつつある。
ゴクリと生唾を飲み込み
霧が開けるのを今か今かと待つ健司。
そして・・・、
「 ・・・!」
遂にその霧が薄い靄へと変わり
奥の窓まで見えるようになった時
その姿は露になった。
「 さな・・・!」