第11章 ◆人と家族
「 ーーーーーーー・・・。」
そうして、
いつしか止まる
健司が唱える呪詛。
鳴り止む呪詛の次は
ゴオゴオと唸るような風の音。
窓から入るその風のざわつき、
それだけがその場を占める。
「 さな・・・。」
呪詛を唱え終えた健司は
目の前の霧がかった竜巻の中心部
さなの方へ視線を送るが
その姿は霧によって閉ざされ
殆ど確認出来ない。
「 ・・・。」
健司は無言のままその場に立ち上がり
床に落とされていたナイフを拾い上げ
スーツのジャケットを折り
内ポケットへと仕舞い込んだ。
「 ・・・耐えるんだ、さな。」
表情を歪ませる健司。
その言葉は、
術の成功を願うものか
さなの安否を問うものか
そのどちらも含まれてるように健司は呟いた。
その健司の目の前の陣は
霧で覆い尽くし
さなの姿は全く見えない。
「 ・・・。」
健司はその場から一歩も動こうとはせず、
霧と妖の血で覆われた陣を
暫し見届けるのみ。
「 ふ・・・、これが
立体的な陣と成る、か・・・。」
目の前の光景を見渡し健司が呟く。
・・・風を巻き込み霧となった陣全体。
それが、立体的な陣として成立する。
その形は異様な程に膨らみ
妖の血が盛り上がる所々で
薔薇のような模様を霧の中に映し出していた。
書物の絵柄でしか見た事の無い健司は
隅々まで目を凝らし脳内に焼き付け
そして、零す大きな溜め息。
「 ・・・。」
ー・・・さな。
成功すれば、きっと・・・。
「 ・・・きっと」