第10章 ◆人の妖化
「 は、離せ!」
『わっ!
ニャンコ先生が、落ちちゃうっ!』
的場よりも少し年が上であろう
的場の部下である男性2人が
夏目とさなの背後に立ち
その腕を確り掴む。
さなは、
抱えていたニャンコ先生が落ちないよう
なんとか踏ん張るが、
目の前に立った的場が
ニャンコ先生をひょいと奪った。
『あっ・・・!』
「 この猫は邪魔ですから、
君たちとは別の場所に待機させておきましょう。
安心してください、
・・・割ったりしませんよ。」
さなの不安げな表情に対し
的場はニコリと微笑み
奪ったニャンコ先生を片手で抱く。
「 にしても、相当な重量だ。
妖というのに一体何を食べてるんです?」
「 このっ、何食べてるかだとー?!
勿・・・論、こっ、高貴な私に似合う
酒と高級食材だ!馬鹿者!
離せーっ!その前に、も・・・戻せーっ!」
たかだか猫と思い抱き上げるには
想像以上の重量感が腕に伝わり
的場は思わず首を傾げた。
「 頼むからやめてくれ・・・先生。」
『・・・。』
揺れ動く事しか出来ないニャンコ先生の
無理矢理抗議する言葉に
夏目もさなもどんよりと視線を外す。
「 まるで、中年男性のようだ。
どうせ、季節に応じて湧き出る酒でも
日頃から飲み漁っているのでしょう。
・・・どうです?
良い酒を用意しますよ。」
「 何っ?この私を酒で釣るつもりか?
ふん、
・・・毒味くらいならしてやる。」
「 先生!
しっかり釣られてるじゃないか!」
『・・・。』
的場の誘惑に抗議と微々たる抵抗を辞め
大人しく抱かれるニャンコ先生に対し
夏目もさなも肩を落とすのは言うまでもない。
「 ・・・・・・ふふ、
大した用心棒だ。」
「 ん、何か言ったか?的場の小僧。」
「 いいえ、何も。
さて参りましょうか。」
小さく零したニャンコ先生に対する嫌味を
当人には濁しながら、
的場は先頭を歩き船内へと戻る。
その後に付くように、
夏目とさなも
的場の部下に促されて無理に足を進めた。