第10章 ◆人の妖化
ーカチャン、カチャカチャ・・・ン
破片を小さく割る
そんな音を響かせ進む的場は
床に固まる夏目達の前で立ち止まった。
「 さぁ、これで邪魔は入らない。」
「 ・・・っ!」
不敵な笑みを浮かべ
夏目達を見下ろし言う的場。
陶器となったニャンコ先生を抱くさなを背中に
夏目は的場を睨み付けていた。
「 怖い目ですね・・・。
弱い者ほど牙を向きたがる。
ふふ、その目が私は好きですよ。」
「 ・・・ぬぬ、ぬ!
な、何という奴だ・・・!」
冷徹で笑顔の奥に潜む感情が
一つも汲み取れない
そんな的場に対してニャンコ先生は
無理矢理に言葉を吐き出す。
『・・・?』
ニャンコ先生が無理に動こうとすれば
その陶器となった体が床に落ちて割れないよう
さながしっかりと抱き直す。
今回もまた動くニャンコ先生を抱き直した時
的場へと向けていた視線が下がり
先程的場が歩く際にカチャカチャと鳴っていた
床に散らばる破片を見る。
『その破片って・・・もしかして、』
細かくなっている破片を見渡し
さなはハッとして呟いた。
「 はい?
・・・えぇ、
私の式 ですよ。」
『・・・そんなっ』
さなの呟きを聞き逃さなかった的場は
夏目からさなへと視線を変えて
クスリと微笑み言った。
「 あのような術も防げない式、
私には要りませんからね。
・・・まぁ、
私の教育不足なのかもしれませんが。」
さなの嫌な予感は的中し、
抗議の声を上げようも言葉が続かない。
その代わりに的場の酷く突き放した言葉が
降ってくる。
「 的場さん・・・。」
非道な言動に夏目も言葉が出ず
床に散らばる的場の式の破片を見渡した後
ただ、的場を睨み付けていた。
「 お喋りはこの辺で良いですか?
・・・捕まえろ。」
微笑みながら話していた的場は
一気に表情を暗くさせ
的場の後ろに控えていた部下達に
低いトーンで指示を出す。