第10章 ◆人の妖化
「ん?なんだこの呪文は・・・」
的場の呪文が響き
それがその場に居た一同の耳に届いた時、
ニャンコ先生はカチンと背筋を伸ばし固まる。
そして、辛うじて開いた口から
何とか言葉を吐き出すが
それも長くはもたなかった。
『ニャンコ先生?』
「 どうしたんだ?ニャンコ先生・・・」
ニャンコ先生の姿に不審がる夏目とさなが
ニャンコ先生の傍へと駆け寄るが
「 か、かたっ!
にゃ・・・ニャンコ先生、
・・・陶器そのものになってるぞ!」
『えぇ!』
夏目がニャンコ先生に触れた瞬間に
カツンという衝突音が木霊し
その触感に夏目は思わず手を引っ込める。
「 な、夏目ぇ・・・」
グギギギ・・・と、なんとか体を捻り
夏目に縋ろうとするニャンコ先生が
ぐらりと傾く。
『あぶな・・・!』
「 さなっ!」
ーパシッ!
ニャンコ先生が傾き
地面に衝突する寸前の所
「 『せ、セーフ・・・』」
陶器となったニャンコ先生を
抱き抱えるさなが
船内の冷たい床へ転がる
その寸前で、
さなと床の間へ夏目が滑り込んだ。
「 お、ナイス だ、二人共!
それでこそ、我がペッ・・・ト!
私のきょ、教育の賜物っ!」
さなの腕の中で動きにくそうに
もぞもぞと身を捩るニャンコ先生が
辿々しくも2人を称賛した。
「 誰がペットだっ!」
『ははは・・・。』
ニャンコ先生の言い様に
青筋を浮かべた夏目の拳が
ニャンコ先生の頭上に翳され
さなは力なく笑う。
・・・そんな二人を他所に
「 んにょーーーーっ!」
ニャンコ先生は
なんとか動けないかと
奮闘していた。
・・・だが、
ーカチャン、カチャ
「 ・・・ふ、
楽しそうですね、
皆さん。」
一連の流れを静かに見守っていた的場が
床に散らばった破片を退けながら
ゆっくりと近付いていた。