第10章 ◆人の妖化
「 まーったく、世話の焼けるっ!」
先程の光線が消え去り、
元の薄暗さに戻った船内。
その中ではさなを庇う夏目の前に
2人が随分と探していたニャンコ先生が
ポテッと着地しては文句を垂らす。
『ニャンコ先生っ!』
「 先生、今まで一体どこへ・・・」
「 良からぬ噂を聞いたのだ。
折ーっ角!
獲れたてのウニを頂く所だったのに!」
ニャンコ先生の姿を確認し
安堵の声を上げる2人が一斉に駆け寄れば
夏目の疑問を遮って叫ぶ
ニャンコ先生のその言葉は
2人からすれば予想通りである。
『う、ウニ・・・』
「 この期に及んで
最もらしく言わないでくれ先生・・・。」
肩の下がる夏目とさなを他所目に
ニャンコ先生は姿勢を正すと
夏目とさなの前に出て
的場へと向きを変えた。
「 ふん、まぁいい。
このツケは高くつくぞ、的場。」
それは何処か少し愉しそうに
ニャンコ先生は夏目にバレぬよう笑い
低いトーンで的場へ投げ掛ける。
「 えぇ、ウニくらい
好きに食べさせてあげましょう。
・・・彼女を渡せば。」
「 やはり、的場
お前が良からぬ噂の根源のようだな。
禁術を使って、人間を妖にしようとは・・・
お前みたいな半端者が考えそうな事だ。
どうする、夏目。
こんな輩、
今すぐ喰ってしまっても良いのだぞ。」
ニャンコ先生は
警戒を一切解くことなく
背後の夏目へ問い掛けた。
「 ・・・半端者、ですか。
ふふふ、面白い。
私の言う事は聞いてもらえないようなので
半端者ならではの遣り方で
奪う とします。」
的場はそう言って笑うと
片手を目の前に挙げ
軽く目を瞑った。
「 ー、ーーーー、ーーーー。」
そして、小さく呟く呪文。