第10章 ◆人の妖化
夏目とさなが振り返った先には
いつの間にか近くまで来ていた
的場とその部下、式だった。
『えっ?!』
「 的場さん・・・!」
いきなりの再登場に
驚きを隠せずに居る2人。
そんな夏目とさなに対して
余裕の素振りで微笑む的場は
ゆっくりと二人の場所へと進む。
「 ・・・!」
夏目は咄嗟にさなを背中に庇うと
1歩前に出た。
「 さぁ、彼女を渡してくれますか?夏目くん。
・・・と言っても、」
「 無理に決まってるでしょう。」
「 そう言うと思っていましたよ。」
手を差し出し言う的場に
きっぱりと返す夏目に
的場は満足そうに笑う。
「 本当に君は面白い。
・・・その面白さを
もっと味わいたいのですが、
今は私も無理なのです。
さぁ、早く渡しなさい、夏目くん。」
『っ!』
先ほどの笑顔とは打って変わり
真剣な表情になる的場を前に
さなは夏目の上着の裾を
ぎゅっと握る。
「 ・・・大丈夫だよ、さな。」
さなの行為に、夏目は前を見据えたまま
小さく、そして優しく
さなに言葉を掛けた。
『夏目先輩・・・。私も、戦います。』
そうさなが小さく言った瞬間、
「 ・・・捕まえろ。」
的場の低く響くその声を合図に
的場の背後に控えていた式が飛び
部下も走り出す。
「 さなっ!」
的場の式が2人までの距離を一瞬で詰めると
夏目はさなに覆い被さり
床にしゃがみ込む。
そして、的場の式が
2人に直撃する瞬間・・・
ーカッ!!
「 何っ?!」
薄暗い船内まで明るく照らす光線が
一面を覆った。
「 うわっ!」
「 おおっ!」
その光に的場の式は飛ばされ
的場の部下達はその場に尻餅を付く。
『・・・この光っ!』
的場の式と部下を吹き飛ばした光が
徐々に消え去ると現れる光線を放った本人。
「 ・・・ニャンコ先生。」
夏目はその名を小さく呟いた。