第10章 ◆人の妖化
「 さな・・・。」
顔を赤らめ心臓を煽っていた夏目は
さなの言葉で少し落ち着き、
ふっと表情を緩ませた。
「 さな、ごめん・・・。
・・・そうだな、
矛盾していたんだな、俺。」
『・・・。』
夏目の言葉にも微動だにせず
頭を凭れさせたままのさな。
夏目はそのさなの頭を
優しく両腕に閉じ込める。
「 さな、俺も自信が無いんだ。
さなの事を護り抜ける自信が。
だから、自分が犠牲になって
さなを助けられたらそれでいい、
・・・そう思っていたんだけど、
それで生まれるものは何か、
さなの気持ちをもっと考えるべきだった。
そして、さなの心を
優先すべきだったんだな。
・・・すまない、さな。」
夏目はさなの頭に自分の頬を軽く乗せ
ゆっくりとさなの頭を撫でた。
『夏目先輩・・・。』
さなは夏目の服の裾をきゅっと握り
小さく深呼吸する。
『私も、護られるばかりじゃなくて
一緒に戦えるようになります。
だから・・・』
「 あぁ、離れないよ。」
夏目はさなの両肩に手を置き
さなとの間に小さく距離を作ってから
さなの目を見てゆっくりと言った。
「 だから・・・、
一緒に止めよう。
・・・的場さんを。」