第10章 ◆人の妖化
「 あぁ、
祓い屋内でも極一部にしか
案内は通達されなかった。
止めに入る祓い屋は省いたんだろうね。
だから私の所にも案内は来なかったけれど
柊に調べさせれば
的場が何を企てているかは直ぐに分かった。
その〝実験体〟の事もね。」
『それって・・・』
「 さなの事ですか?」
名取が話すその実験体の言葉に
反応する2人が問い掛ければ
名取はゆっくりと頷いた。
「 実名は
書かれていないようだったけれど、
実験体は妖力の強い16歳の少女。
家族はなく、主に遠縁宅に1人で生活。
反応する妖が出る可能性があるので
式は連れて来ないように。
もしくは
船内地下の拘留所で待機出来る式のみ。
そういう簡単な内容だったみたいだ。」
名取はさなに視線を向けながら
ゆっくりと話した。
「 それで七瀬さんが
さなに近付いてたんですね。」
『・・・。』
「 さなちゃんを調べる為に
善者を装って近付いたんだろうね。
けれど、
さなちゃんを拐おうと思えば
いつでも出来たはずだけど
そうはせず自ら船に乗るように仕向けたのは
何か理由があるのかもしれない。」
確かに。
名取の言葉にそう呟いたのは夏目だった。
名取と夏目がやり取りをしている中で
さなは拳をギュッと握りしめる。
『・・・私は、
ひとりじゃないので。』
「 ?」
「 さな?」
さなの小さな発言に
名取と夏目はさなに視線を向けた。
『ひとりじゃないし、
駄目なことは駄目なので
的場さんの目論見、全力で阻止します。』
さなにとって、
的場に1人と断定されたのが余程悔しく
関わりを持つ夏目や学校の先輩、同級生、
ニャンコ先生から始まる妖等
それらを思い出せば
自然と強く言葉を発していた。
「 ・・・そうだね。
私も同じ意見だよ、さなちゃん。」
「 絶対に止めよう、さな。」
さなの言葉に賛同する意として
夏目と名取の2人は何度も頷いた。