第10章 ◆人の妖化
『・・・・・・っ。』
夏目の力強い言葉に
赤面を隠せないさなは
思わず視線を床に向ける。
「 だから、さな。
独りで背負わないでくれ。
それに、
一緒に背負う方が軽く済むだろ?」
ぽんっとさなの頭に乗せられる
優しい夏目の手の温もりを感じながら
さなはまた、
頷く事しか出来なかった。
「 さなちゃん、
夏目の言う通りだよ。
そもそも、守る気が無ければ
既に放って逃げてるさ。」
後ろを向き
さなに対してキラキラと笑う名取は
2人のやり取りを聞いていたようで
ナチュラルに会話に入れば
しれっと流した。
『名取さん・・・。』
「 そういう事だから、さなちゃん。
存分に守らせてもらうよ。
なんだったら、私の手伝いとして
働いてくれても良いけどね。」
名取を見つめるさなに対して
ウインクを飛ばしてニコリと微笑む。
「 最後は余計ですけど・・・。
でも、さな、
俺達が側に居るから
心配しないで。」
名取への突っ込みを忘れない夏目も
さなに対してニコリと微笑む。
『夏目、先輩・・・。
・・・ありがとう、ございます。』
2人の笑顔に安堵する気持ちで答えれば
自然とさなも表情が緩む。
「 ・・・ところで、名取さん。」
「 なんだい?」
会話が一段落付いたところで
夏目が名取に問いかける。
「 どうして、ここに居るんです?」
「 その質問は2度目だね、夏目。
さっきは言いそびれたから今言うけれど
私が此処に居るのは、この船が
・・・祓い屋の会合場所だからだよ。
会合と言っても、今回の案内は
極秘の〝実験場所〟だったけどね。」
最後の言葉には笑顔を無くし告げる名取に
夏目とさなは思わず立ち止まる。
「 『実験場所・・・』」
散々話していた先程の事柄、
2人は口を噤んだ。