第9章 ◆的場一門
「 名取さんは知ってるんですか?
的場さんが今しようとしていることを・・・」
「 まぁ大体、ね。」
夏目が1歩名取に近付き問えば
名取はニッコリといつもの笑顔に戻り肯定した。
『あの、
夏目先輩とあの的場さんが話してるの
私、聞いてなくて・・・
どうしてこんな事になっちゃったのか
私にも教えて欲しいです。』
2人の会話を聞いて咄嗟にさなも
名取に数歩近づけば
名取は少し驚きつつも
早急にきらめいた笑顔を作り
更にさなとの距離を詰める。
『えっ・・・?』
「 さなちゃんは
意識を飛ばされていたから仕方ないよ。
・・・にしても珍しいね、
さなちゃんの方から
寄り添ってきてくれるなんて。」
そう言ってさなの肩を抱き寄せれば
「 名取さん、
違う意味で捉えないでください。
さなは術をかけられた後ですよ。
それに高校生に手を出したら犯罪です。」
名取がさなの顎を掬うように
指を添えた瞬間、
すかさず
その腕をガシッと掴むのは夏目だった。
「 相変わらず
どの付く過保護具合だね、夏目。」
夏目によってさなから離された名取の腕は
重力に従って名取の真横についた後
名取はため息混じりに笑い降参の合図をした。
「 えぇ、
手を出した瞬間に
警察に突き出してやりますから。」
キッと睨む夏目がさなを背後に庇う。
「 えらく、キツい言われ様だね。
そんなに束縛が激しいと
逃げたくなるものだよ。
夏目が鬱陶しく思ったらいつでも
私の所においで、さなちゃん。」
名取が手を差し伸べて言えば
『えぇ・・・っと。
き、気が向いたら・・・。』
遠慮がちに言うさなに対し
「 ぶっ!
気が向いたらって・・・ふっ。」
「あぁ・・・いや、
素直は良い事だよ。
でも、夏目は笑い過ぎだ。」
思わず2度も吹き出す夏目に
突っ込みつつ、苦笑する名取は
苦しいフォローをしながらも
さなのペースを掴めずに居た。