第9章 ◆的場一門
「 ・・・それよりも、本題だけど。」
先程和んだ空気を一変させて
名取が話を元に戻す。
「 夏目はもう聞いていると思うけど
的場が言っていたのは
〝人間の妖化〟の話だね?」
「 ・・・そうです。」
名取が話す内容に
ひとつ返事で頷く夏目の傍ら、
『人間の・・・妖、化?』
さなはその言葉の意味を察し
呆然と名取を見上げていた。
「 ・・・あぁ、
今では禁術と呼ばれているものだよ。
的場はその禁術に手を出す気で
その実験体とも言える人物を
探していたんだ。
妖力が強く、それを公にしていない
殆ど1人で生きている人間・・・。」
名取はさなの前で
さなの視線まで屈むと
その頭に優しく手を乗せた。
「 君のような、子をね。」
名取の視線が捕らえたさなの目を
一切外すことなく伝える。
『・・・私、ですか・・・?』
「 あぁ、そうだよ。」
「 ・・・っ。」
さなの少し上擦る声に
名取は真剣な眼差しで答える。
その横で夏目が拳を握り締めるのを
名取は見逃さなかった。
「 だから、
何としても的場の目論見を
絶対に止めなければならない。
君を守る為に。
人は、人としての道理を
外れてはならないんだ。
・・・絶対に。」
力の篭った名取の言葉に
さなは無言で頷き
「 さな、
本当は縄を付けていたいところだけど
そんな縄もニャンコ先生も今は居ない。
絶対に俺達から離れないで。」
「 辛いと思うけど、
今は的場を止めるのが先決だ。
ここで逃げてもさなちゃんを狙って
追い続けるだろうからね。」
夏目と名取が交互に話す言葉を
さなは何処か上の空で聞きながら
『・・・はい。』
少し俯きがちに、2人に対して返事をした。
ー・・・私が、妖にされる・・・の?
どうして、私が・・・。
そのさなの心中の疑問は
2人には伝えずに・・・。