第9章 ◆的場一門
「 ハァ・・・ハァハァ」
『・・・ハァ、ハァ
ど、何処が出口・・・なんでしょう・・・?』
「 ふぅ、
どうやら結界が張られているみたいだね。」
外の光が薄らと入る船内の角で
只管走っていた3人は
その体力の限界を感じ自然と足を止めていた。
そして、
息も絶え絶え言葉を発する若い2人とは反対に
キラリと汗を拭う名取は
直ぐに息を整え辺りを警戒している。
「 結界って・・・どうするんです。
早く出ないとまた、的場さんが・・・」
「 落ち着きなさい、夏目。
何を話されたかは知らないが
的場の言葉に惑わされちゃ駄目だよ。
・・・夏目の優しさに付け込んで
的場が君たちを利用しようと企んでるのは
夏目自身が1番よく分かってるはずだ。」
静かに語り掛けるよう夏目に話す名取は
数歩離れた所で聞いていたさなに
目を向けた。
『・・・・・・?』
胸に手を当て、
早まる鼓動を押さえていたさなは
自分に向けられる視線に
小さく首を傾げる。
過去に夏目は
名取には何も言わずに単独で
的場の手伝いを請負った事を
名取は思い出し目を細めた。
「 彼女の為にも、・・・ね。」
その言葉は重く
記憶にある的場と関わった事件を幾つか
思い浮かべて夏目も押し黙った。
「 ・・・。
それは、分かりました。」
名取の視線を追ってさなを見る夏目に
さなはまたも首を傾げれば
2人の会話は少し落ち着き、
いつも通りのトーンに戻る。
「 大体、人が絶対に逃げられないような
こんな海の上に高校生を誘拐しておいて
更に脅迫するなんて
出来ることなら
今すぐ警察に突き出してやりたいよ。
・・・彼のやり方は
本当に癇に障る。」
やれやれ、と
大きくは表情を変えずに名取は愚痴を零す。
そして
「 何を考えてるか
予想がつくからまた困るんだ・・・。」
少しボリュームを小さくして
零す言葉は夏目とさなにも
しっかり届いた。
「 『え・・・?』」