第9章 ◆的場一門
「 邪魔者が入ったので・・・ね?」
『え・・・?』
さなが聞き返す間もなく、
的場は掌でさなの顔全体を覆った。
「 やめろっ!」
その場の空気が
ふわっと上下する感覚に陥った時
夏目は咄嗟に走り出していた。
「 夏目!」
「 ー、ーー。」
名取の呼ぶ声も無視し
術を唱える的場の元へと
夏目は猛ダッシュで掛けていく。
あと数歩で辿り着ける
そんな場所だった、
にゅっと伸びる的場の式が
夏目の前に憚る。
「 ーっ!」
その的場の式の腕が夏目へと
直撃する瞬間。
ーバシッ!
夏目が立ち止まり咄嗟に目を瞑ると
衝撃音だけが聞こえる。
「 ・・・?」
恐る恐る目を開けると
目の前の床に
的場の式がのびている光景と
傍らに転がる細長い棒。
「 夏目、早く!」
「 っ!は、はいっ!」
背後から掛かる名取の声にハッとして
夏目は再度、的場の方へと滑り込んだ。
「 的場さん!」
さなに術を掛けていた的場を
突き飛ばす勢いで夏目は押し退けると
「 おっと。
・・・なんです?
もう少しで」
「 いい加減にしてください!」
夏目の衝突にふらつき、
術を唱えるのを止める的場が
肩を落として夏目へと視線を送れば
的場が言い切る前に夏目が怒鳴る。
「 俺達は、
貴方の道具じゃありませんよ。」
夏目は的場に向けて言い切ると
さなの前に跪き、
さなの腕に巻き付いた札を
力任せに破り捨てた。
「 ・・・ふふ。
君は本当に面白い。」
さなを支えながら立たせる夏目を見て
的場が笑う。
「 道具、だなんて。
私は彼女を救おうと思っていたのですが、
君たちからすれば
余計なお世話のようでしたね。」
「 あぁ不要だね。
夏目、行くよ。」
「 ・・・、
無理だろうが
俺は守りますよ、さなのこと。
あなたのその捻じ曲がった考えの助けは
要りません、迷惑です。」
夏目がそう残すと
ドアを開けて待つ名取の方へ
さなと共に進んだ。
『夏目先輩・・・。』