第9章 ◆的場一門
「 やめ、ろ・・・!」
夏目が体を捩っても式の掴む腕が
離れることはなく、
さなからはどんどん離れていく。
ーガチャリ
的場の部下が扉を開ける音を聞きながら
さなの方へ振り返れば
いつの間にかさなの前に跪く的場が
さなの顔に手を翳していた。
「 的場さんっ!」
ーパチン。
夏目が部屋から出されると同時に
的場が指を鳴らす。
・・・そして、
「・・・うわっ!」
夏目が掴まれていた腕の解放感に
気付いた瞬間、
そのまま床に落とされた。
「 ・・・?」
ドンッという夏目が落ちた鈍い音に
反応した的場が夏目へと顔を向ける。
「 いってて・・・。」
落下した拍子にぶつけた腰をさすりながら
上半身を起こす夏目に掛かる影。
夏目はその影を見上げると、
「 ・・・・・・名取、・・・さん?」
そこには細長い棒を片手に立つ名取。
「 やぁ、夏目。・・・奇遇だね。」
カチャリと眼鏡を掛け直し、
キラキラと爽やかな微笑みを
夏目へと向けて挨拶する名取はいつも通り。
「 ・・・ど、どうして、ここに・・・?」
「 それは、こっちの台詞だよ。
・・・君はいつも
面倒事に巻き込まれに行ってるね。」
ほら、と手を差し出し
寝そべる夏目を立ち上がらせると
手に持った棒を構え直す。
「 少女誘拐、少年を脅迫。
立派な犯罪者だな、・・・的場静司。
彼女も返してもらうよ。」
「 ・・・ほう、
面白い方がいらっしゃったのですね。
気付きませんでしたよ。
その上、他人の物を横取ろうとは
まるでコソ泥だ、・・・名取周一さん。」
的場は表情変えずその場に立ち上がる。
その時
『・・・ぅ』
その小さな呻き声にいち早く夏目が反応した。
「 さなっ!」
『・・・え、
・・・此処っ?
夏目、先輩・・・?』
夏目の呼び声に
ぼんやりと辺りを見渡すさなの前に
視界を遮るように的場が立つ。
「 起こしたばかりというのに、すみません。
もう一度、眠ってもらいましょう。」
的場は再びさなの前に手を翳す。