第2章 ◆新友人帳
「 え……?」
〝レイコ〟の名を呼ぶ
透き通るような声に導かれ振り返ると、
そこには
鮮やかな紫の着物を纏い
さらりと長い黒髪を風になびかせ
木陰からこちらを覗く女性が立っていた。
「あら?…レイコではないのね。」
さなの顔を見るなり
そう判断するその女性は
安堵したような、どこか悲しげにも取れる
そんな表情をしている。
「ねえ、貴方、友人帳を持っているなら
名を返してくれないかしら。」
女性は木陰から全身を現し
さなの近くまで来ると
跪き、真剣な眼差しで訴えた。
「 名を…返す?」
さなにとっては
女性が言っている意味も分からず
ただ、オウム返しするしかない。
「貴方は、友人帳の意味を知らないの?」
目を丸くさせ小さく首を傾げながら
女性を見つめるさなに
その女性は深く追求する。
「 ご、ごめんなさい・・・、
私はただ祖母の遺品だと受け取っただけで
これが遺品ということ以外、
何なのか分からないんです。」
さなは先程
友人帳を渡せ、と妖に襲われたことが
脳内で再生され、恐怖心が蘇り
今にも泣きそうな表情で
目の前の女性に訴える。
それを見た女性は一瞬驚く表情を浮かべるが
直ぐにふっと顔を綻ばせると
「そう、貴女は何も知らないのね。
それは・・・友人帳は妖達の命とも言われる
名前が書いてあるの。」
静かに優しく言い聞かすようにして
そう教えてくれる女性に
さなは一言も漏らす事の無いよう
聞き入った。