第2章 ◆新友人帳
さなが妖に足を掴まれた瞬間
物凄い勢いのまま
妖の足元まで引き摺られていた。
〝捕まえたぞ。
レイコ、友人帳を渡せ!〟
奇怪な顔が目の前に現れ
先程のセリフを連呼する。
……レイコ?
……友人帳?
さなにとって初めて耳にする
その名前の人物は
きっと今までには会ったことはない。
・・・なのに、
友人帳という名詞で何かが引っかかるが
その先を考えようにも
妖の手がさなの首元目掛けて
伸びてくるのを目にし思考が停止される。
……ー逃げなきゃ!
意を決して、妖の手を無理矢理振り払うと
森へと続く道を一目散に走り出した。
後方から押し寄せる
待て!、待て! と静止を叫ぶ妖の声が
一切聞こえなくなるまで只管走り続け、
妖の声が漸く聞こえなくなった所で
近くにあった大木の裏へと
ヘタリ込むように隠れる。
「 ハァ、ハァー・・・、…ここなら
……もう、来ない…かな?」
どれほど走ったかは分からないが
辺りは夕焼けを終盤に迎え
暗闇が森一体を飲み込みかけている。
妖に引き摺られ、擦り切れた足の傷は
逃げるのに必死で構うことができず
気付けば、瘡蓋となり既に塞がれていた。
「 ……どうして 、私が・・・。」
今までのさなにとっては
妖は見ない振りをすれば
そのまま過ごせていたはず。
しかし、
今日追いかけてきた妖は
さなを〝レイコ〟という人物と間違え
〝友人帳〟を渡せ、と確かにそう言っていた。
追い掛けてくる妖を捲いて隠れる
今になって気付く。
〝友人帳〟とは確か、
叔母が亡くなる前に祖母の遺品だと受け取った
あの冊子のことである。
……ー肌身離しちゃだめよ。
叔母がそう言った日から、外出時は常に
鞄の中に仕舞われているその冊子を
鞄から取り出し手に取る。
「 何が書いてあるんだろう?」
特に気にも止めていなかったその冊子を
開けようとした時だった。
「貴方は…、夏目レイコ……?」