第9章 ◆的場一門
「 人間の・・・妖、化?」
思ってもみなかった言葉に
夏目は唖然とし、同じ言葉を復唱する。
「 ・・・やはり、君も知りませんか。
まぁ言葉の通りなのですが
人間を妖に変える、という
云わば 禁術 です。」
落胆するかのように溜息をこぼしながら
的場は夏目に向けて軽く説明した。
「 ・・・その、その禁術が
どうしたんです。
まさか・・・」
「 えぇ、君の予想通りですよ。
私はそれに興味があって、
それには妖力の高い人間が必要です。
高い妖力を持ちながら
その力を使わず、誰にも打ち明けず・・・
そんな人間を、
ちょうど 探していた所なんです。」
語尾をゆっくりと、
尚且つトーンも低くさせ微笑む的場の目は
捉えていた夏目から横へと移動した。
「 ・・・!?
さなを使う気ですか?」
的場の向けた視線を辿るとそこには
ソファに項垂れるさなで、
夏目は思わず声を上げる。
「 そうです。
もし成功すれば、
彼女は簡単には死ねませんし
今ほど弱くもないでしょう。」
「 ・・・。」
「 夏目くん、
君自身も自分を守れないのに
彼女も守るなんて無理でしょう?
自分の身は自分で守るべきなのですよ。
・・・まぁ、君には
用心棒のあの猫が居るようですが。
どうです?
悪い話ではないでしょう?」
そう尋ねる的場は
ニコリと笑った表情を崩さない。
「 ・・・か?」
夏目が俯きながら発する言葉は
語尾だけが的場の耳に届き、
「 ?・・・なんです?
賛成してくれますか?」
的場が再度聞き直すと
夏目は顔を上げる。
「 話は、・・・それだけですか?」
フルフルと拳を握りしめて
夏目も問いかける。
「 そうですね、
君にもその作業に手伝って欲しい。
と言ったら?」
「 お断りします。
・・・そんなこと、有り得ませんよ。
今すぐ俺たちを帰して下さい!」
即答で声を荒らげる夏目に的場は
フッと笑い、ソファに背を凭れさす。
「 ・・・だと、思いました。」