第9章 ◆的場一門
ーコツコツ・・・
複数の足音が続く
豪華で人気の無い船内。
「 ・・・。」
あの後、いつの間にか
的場の近くまで来ていた船は
そこから梯子を伸ばし
的場はその梯子を辿ってゆっくりと船内へ進む。
夏目も背後に七瀬と式が付きながら
的場の後を追って船内へと足を進めていった。
「 ・・・何処へ行くんですか?」
船内に入り長く続く廊下を歩くこと数分で
夏目は口を開く。
「 まずはさなちゃんを休ませる所に参りましょうか。
彼女が目を覚ますまでは、君と話がしたい。」
「 それなら、さなを離してください。
話すだけならさなの腕を縛る必要無いでしょう。」
的場の腕の中で窮屈そうにぐったりと凭れる
さなの表情を伺いながら夏目は言う。
「 えぇ、話が終わったら解きますよ。
また、前の君のように逃げ出されたら困るので
彼女の意識も暫く無くさせています。」
「 ・・・。」
それは以前、名取と共に行った宿での出来事だった。
今のさなと同じように腕を札で縛られていた夏目は
的場の隙を見て逃げ出したのだが
今回はそうは行かない。
ー・・・一体、何を企んでいるんだこの人。
サラッと碌でもない事を言う的場に対し
更に不信感の増す夏目は口を噤む。
「 心配しなくとも、彼女に手は出しませんよ。
・・・君の回答次第ですが。」
笑いながら夏目を見る的場の目からは
その感情は読み取れず、
足を止める的場につられて
夏目もゆっくりと足を止めた。
ーガチャリ、と
目の前にある扉を七瀬が開け
「 どうぞ、
海の上なら逃げられないでしょうし
船旅を楽しみましょう。」
夏目を中の部屋へと誘導する。
「 ・・・。」
夏目も中に進むと
後ろから続く的場が
近くのソファへとさなを下ろした。
「 さぁ、どうぞ。
掛けてください。」
「 ・・・話って何です?」
的場の座る反対側へと腰を掛ける夏目は
単刀直入に話題を振る。
「もうその話ですか。
・・・まぁいいでしょう、約束ですし。
君は、
人間の妖化を知っていますか?」