第9章 ◆的場一門

ーヒュッ･･･



的場の持つ札が素早くさなの腕へ絡まる。



「 ･･･次は夏目くん、貴方ですよ。


それとも、

大人しく船に乗りますか？


･･･さなちゃんと一緒に。」



「 ッ･･･」




さなの腕に札が巻き着くのを確認した的場は

倒れるさなの元へとゆっくり近付き、

既に意識の無いさなを抱えた。



「 さぁ、どうします？

この子を放って帰りますか？

でしたら、力ずくで･･･」


「 話を、したら･･･！」


「 ･･･？」



的場の言葉を遮るよう夏目が発した後

ゆっくりと立ち上がる。



「 話をしたら、

帰してくれると約束してください。」



「 あぁ、そんな事でしたか。

それは約束しますよ、


･･･今日のところは。」



「 今日のところって･･･

どういう事ですか？

そもそも、

さながあなたに何したって言うんです？」


「 そうですね、

私にとって興味があるのですよ。

この子にも

･･･夏目くん、君にもね。



君たちはとても、面白そうだ。」



ニッコリと笑い言った後

夏目に背を向けて歩き出す的場は

ゆっくりと海の方へと進んで行く。



「 ちょっ･･･！」


静かに離れていく的場を追う為

その場を駆け出した夏目は

頭と肩の痛みにその場に膝から崩れた。



「 それ以上は、船で話しましょう。

動けないなら手を貸しますよ。」



視線を向けることなく夏目に言葉を続ける的場は


「 ･･･連れていけ。」


低くなった声のトーンで静かにそう発した。



「 ･･･ぅわッ！？」



その瞬間、夏目の体は

的場の式により持ち上げられ

的場の後を追うように進み始める。



「あ、歩けますよ！

離･･･せっ！」




その違和感に夏目は

思わず式たちを蹴飛ばして着地する。




「 ･･･君も相変わらず、乱暴ですね。」


「 あなたに言われたくありません。」




夏目の言動にクスッと笑う的場に

しっかり突っ込み、

伸びている式を後に

夏目は的場に追いつく。







「 では、参りましょうか。」