第9章 ◆的場一門
「 ・・・別に、
的場さんと友達になりたいなんて
言ってませんし
相手を気遣えなければ、
友達とは言えませんよ。
・・・失礼します。」
夏目はそう言い切ると
さなの手を引き、
近付く的場を避けるよう
歩き始めた。
「 ほほう。
・・・そうですか
あまり、手荒な真似は
したくなかったのですが」
少し残念そうに首を傾げる的場が
ニコリと笑いながら呟く。
そして、ふうと一息ついて
「 ・・・仕方ありませんね。
さなちゃんから行きましょうか。」
的場はそう言うと指に挟んだ札を
夏目の後ろを行くさなに向けた。
「 ~~~、~~~」
『 ・・・?』
そして小さく唱える的場の呪文は
さなの耳に入り、その足を止めた。
「 ・・・さな?
・・・どうし・・・?!」
急に止まるさなに対し
後ろを振り向く夏目が目にしたのは
的場の術を受けて俯くさなで、
「 さな!
駄目だ・・・、聞くな!」
夏目は思わず、俯くさなの耳を塞ぐように
頭ごと抱き締める。
『 ・・・うっ。』
「 さな?!
しっかりするんだ!」
さなの苦しそうな声が
夏目の腕の中で響く。
「 的場さん、
やめて下さい!
さなは、関係ないでしょう!」
夏目の言葉にも一切聞く耳は持たず
只管に術を唱える的場の表情は
変わらずに笑っている。
「 的場さ・・・ん・・・っ!」
夏目が更に言葉を足そうとした直後
2人の背後に暗く影が掛かった。
ーバシンッッ!
その衝撃は一瞬で
「 ぐッ・・・ぅ!?」
即頭部に直撃したそれは一気に
夏目をはじき飛ばし
その衝撃で数メートル飛ばされ
肩から着地した夏目は
ズキリと痛む頭を抑えて
なんとか顔を上げると
「 ・・・!」
夏目が先程まで居たそこには、
いつの間にか立っていた七瀬と
その七瀬の側で倒れるさなの姿。
「 ・・・さなッ!」
その呼びかけも虚しく
さなは動かなかった。