第9章 ◆的場一門
「 きっと、さなに接触したのも
さなの情報を何処かで掴んで・・・」
ー・・・何か、させる気なんだ。
途中で言葉を飲み込む夏目が
ぐっと唇を噛む。
「 ・・・」
薄々言葉の続きを読み取ったさなも
夏目に対して特に追求せず
手を引かれるまま足を走らせた。
「 ・・・さな、
的場さんという人は
とても危険な人なんだ。
使えるものはどんな悪どい手段を使っても使う
そこに良心なんてものはないような人。
だから、さなにだけは
関わらせたくないんだ。」
絞り出すように零れる夏目の言葉は
時折風や海の波の音で途切れながら
さなの耳にしっかりと伝わる。
「 夏目先輩・・・。」
ー・・・夏目先輩も過去に
その的場さんという人と関わって
大変な事に巻き込まれたのかな。
夏目の言葉にそう察したさなは
苦しむ胸を抑えながら何度も頷いた。
「頑張って、
逃げましょうね!」
目の前の夏目の背中に向けて発するさなが
夏目の前方に視線を向けた瞬間だった。
ーー??
「 夏目先輩!
前っ!」
それは1枚の札を指に挟み
目の前で立たせる長髪の片目の男性。
「 っ!!
あれは・・・、
ま、的場さ・・・ん・・・。」
「 え、!」
さなの声で
その見知った姿を確認した夏目が
その名を呟きながらゆっくりと足を止める。
「 ・・・あの人が、
的場・・・さん?」
散々走ってきた為に上がる息のせいで
二人とも途切れながらの言葉を零す。
「 ・・・さな、
俺から、絶対離れるな。」
「 ・・・はい。」
肩で呼吸をしながらも
夏目の言葉は強く
さなの手はしっかりと握られたまま
その姿は背後に隠される。
「 ・・・一体、
何の用ですか、的場さん?」
距離を置いて立ち止まった夏目は
少し声のボリュームを上げて
その人物に問う。
「 ・・・ふふ。
やっと、会えましたね。」
その目は夏目の後ろを捕らえていた。