第9章 ◆的場一門
「 あのッ夏目先輩?
・・・反対ですよ、駅!」
「 あぁ、分かってる!
少し遠回りするだけだから。」
さなの手を取るというより
引っ張って進む夏目は
駅とは反対方向の
漁船の集まる地帯を駆け抜けている。
そんな訳もわからず走っているさなが
夏目に問えば、
顔を前方に向けたままの夏目に
言葉だけで返され
「 あ、もしかして!
ニャンコ先生探しにですかっ?」
「 え!・・・・・・あ、ええと
そ、そうだな!
ニャンコ先生が居ないか、
よく見ておいてくれさな」
ー・・・そういう事にしとこう。
走りながらの受け答えはキツイ。と
内心感じる夏目は
さなの持っていく方向へ会話を終わらせた。
「分かりました。
でも・・・」
「 ?」
ー今度はなんだ?
「あの、
・・・七瀬さんの車が
後ろを付いてきてるんです。」
「 なっ??!」
ーな、七瀬さんの・・・?!
思わず振り返る夏目の目には
ゆっくりと距離を縮める黒いセダン車が映る。
「 船に乗るって言ってたから
私の見間違いかもしれないんですけど。」
そう付け足し言うさなに
夏目は車が通れない逃げ道を探しては
そこを突き抜けようとしていた。
「 いや、間違いない・・・!
あれは七瀬さんの車だよ、
たぶん俺達を追ってきたんだ。」
「 え、追うって・・・?
乗船断ったからですか・・・??」
ー・・・そこだけ聞けば凄く
船に執着しているように聞こえるけれど・・・
「 ・・・ッ、だろうな・・・!」
さなの言う事に間違いはなかった。
「 あの人は、
的場一門という祓い屋大手頭首の
秘書のような人なんだ・・・。」
「 は、祓い・・・屋。」
もう隠せないと観念した夏目が
大雑把に説明すると
明らかにトーンの下がった
さなの声が零れた。