第2章 ◆新友人帳
「もう、転校の手続きは済ませてあるから、
今日はゆっくりしていなさい。
……あ、そうそう、
今日から君の名前は望月さなだ。
夏目という苗字は捨てなさい。
分かったね?
僕は仕事が忙しいから
家を空けることが多いが、
僕たちの関係は一応家族だ。
よろしく頼むよさな。」
その、口早に説明をしてくれる男性は
何処か裏がありそうな口ぶりだった。
ー…仕事で忙しいのに
こんな田舎に住んでるんだ。
さなにはその裏を探るほどの余裕はなく
「 ・・・よろしくお願いします。」
そう頭を下げるだけだった。
「僕のことは
健司さんとも呼んでくれ。
……まぁ、
あまり呼ばないで欲しいが。」
「 は、はい……。」
きっと仕事が忙しいのだろう。
ーあまり迷惑をかけないようにしよう。
そう思い、気分転換も兼ねて
町を散策しに外へ出た時だった。
“オ、オマエ……!!
レイコじゃないか!”
そう叫ぶものの正体は
おそらく、この世のものじゃない。
〝妖〟と言われるものの類。
さなは今まで通り見ぬふりをして
横を過ぎ去ろうとしたとき
妖の腕がさなの足元まで届き
足首を掴み自分の元まで引き摺る。
「 っ!?
きゃあっ!!」