第9章 ◆的場一門
ー・・・!
やっぱり、的場さんの策略か・・・。
「 さな、行こう。」
「 え・・・?」
その瞬間、夏目はさなの手を取り
七瀬の前から退散する。
夏目の後ろでさなが小さく
失礼します。と七瀬に会釈をしながら
ー・・・早く、ここから離れないと。
夏目はその思いで
今まで歩いてきた道を足早に戻った。
「 ーあの、夏目先輩。」
「・・・なに?」
2人手を取り前後に歩く中
背後から掛けられる声に夏目は振り返る。
「 もしかして、怒ってますか・・・?」
振り返った瞬間に掛けられる言葉と
そのさなの表情は少し困惑気味で
「 え・・・、どうして?
怒ってなんて無いけど・・・。」
夏目は思わず立ち止まる。
そして、
「豪華客船、
本当は乗りたかったですよね?
・・・私が勝手に断っちゃって
ごめんなさい。」
「 ・・・・・・・・・は?」
ー・・・そっちか!
思わず素っ頓狂な声を上げる夏目は
ポカンと口が開く。
「 いや、えっとその・・・
それは全く思っていないよ。
寧ろ、さなが断ってくれたから
俺も帰りやすくなって有難いというか・・・」
「 やっぱり!」
謝るさなを前に
必死に弁解する夏目が段々と語尾を濁らせていると
夏目の弁解を遮るようにさなが一歩近付く。
「 えっ?」
「 やっぱり 夏目先輩、
七瀬さんとお知り合いなんですね?」
その核心を突かれたさなの言葉に
夏目はまたもやポカンと口を開けた。
「 人当たりの良い夏目先輩が
七瀬さんに対して物凄く無愛想だったから
おかしいって思ったんです。」
「 ・・・そ、そうだったのか俺。」
無意識にしていた事程
他人がよく気付くもの。
夏目はその事に小さく反省をする。
「 それに、私
七瀬さんに言ってないんです」
「 ・・・言ってない?」
「 ・・・自分の名前。
なのに、名前で呼ばれたから。」
名札とか落としてたかもしれないですけど・・・
そう続けるさなは不安げに笑った。