第9章 ◆的場一門
ー・・・そうだったのか。
という事はさなの事も調べてたんだ。
「 ・・・ごめん、
隠すつもりは無かったんだ。」
ー・・・あの人(的場さん)から
さなを隠し(守り)たかっただけで・・・。
さなに隠し事をするつもりは、
一切無かった。
夏目のその想いは
小さなため息に乗せて地面へと落とした。
「 ・・・怒ってないですよ、私も。」
地面へと向いていた視野の中にふっと
さなの顔が覗き込む。
謝らないでください。
そう言って笑うさなは周りを見渡し
七瀬の存在が無い事を確認し
「 ・・・私が断ったから帰りやすいって事は
きっと、夏目先輩が七瀬さんと
一緒に居たくないって事ですよね?」
さなは小声で話し始める。
「 夏目先輩は
理由なく人を嫌う人じゃないから
信じます。だから帰りましょう。」
「 あ、あぁ・・・。」
本当は少し乗ってみたかったんですけどね。
そう加えてニッコリと笑うさなは
未だ取り合ったままの夏目の手を引き
駅の方へ歩き始めた。
ー・・・そう、
関わる全ての人を大切に思い
全力で守る夏目先輩だから。
「 さな、また今度乗ろう。
大人になって、自分たちの力で
色々な所に行けるようになったら
・・・だけど。」
「 ・・・はいっ!」
ふっと笑う夏目を見上げて
満面の笑みで返すさなは
そのまま駅までの道を辿っていく・・・が、
「 ・・・あれ?
そういえば、
ニャンコ先生は・・・??」
「 あっ・・・!
すっかり忘れてた。」
港に着くなり、高級海鮮の匂いがする!
と飛び出していったニャンコ先生の存在を
今頃気づく2人。
「 まぁ、
ひとりで帰ってこれない訳ではないけど
先生が行きそうな所は検討も付くし・・・」
「探しましょうか。
・・・私も
すぐ見つかりそうな気がします。」
少しどんよりとした空気を纏って
2人は漁港の方へと進路変更をした。