第9章 ◆的場一門
「 わぁー・・・」
「「 おっきーい・・・!」」
綺麗に揃う2つの声。
いつも以上の人々で賑わう港で
その姿はそんな人々よりも存在感があり
行く人の足を止める程圧巻だった。
「 こんなにも大きいなんて・・・。」
「 確かに・・・、
ここまで立派だとは
思ってもみなかったよ。」
まるで空いた口が塞がらないように
2人は天高くまで続く甲板を見上げ、
ポツリポツリと出てくる感想を
次々と零す。
小さな村にも噂として舞い込んだ
この豪華客船の到来。
それは夏目たちの住む集落から
電車を何本か乗り継いで行く都会の港に
数年に1度しか来ないという
とても稀なものだった。
「 ・・・あっ、あそこに
記念品配布してる所がありますよ。
行きましょ。」
「 ん?あぁ・・・。
そんな所あるのか?」
さなが視線を元の位置へと戻すと
乗船員の制服姿の女性が
〝記念品配布〟のプラカードを持って
行き交う人々を次々に招いていた。
「 先輩っ、早く早く」
「えっ・・・! 」
未だにその記念品配布場所を
見つけられない夏目が
キョロキョロと辺りを見渡していると
さなはその夏目の腕を取り
小走りで誘導する。
「 おいっ、さな
あんまり急ぐと他の人にぶつか・・・」
ードンッ!
只でさえ人の通りが多い中、
夏目は自身の腕を取り
小走りで進む目の前のさなに
注意をし終える寸前、それは起こった。
「 わっ・・・!」
衝撃により、夏目の腕を離し
その小さな身体は左方向へと崩れていく。
「 ・・・さなっ!」
「 っ・・・!」
夏目は自由になった腕を咄嗟に伸ばし
傾くさなの右腕を掴んでから左肩を支え、
なんとか地面への激突を阻止した。
「 っと、大丈夫か?」
「 ・・・えっ、あ、はい
ご、ごめんなさい。」
さなは衝撃に備えて閉じていた目を開き
目の前の夏目の姿に状況を判断すると
急いで夏目の腕から離れ謝罪をする。
そして、
ぶつかった相手にも頭を下げた
その時
「 おや?
また会ったね。」