第2章 ◆新友人帳
けれど、さなは
妖の存在から目を背け、
今まで受け入れないでいた。
さなにとっては恐怖心が勝り
この世のものではないと断言できるそれを
見えてしまう。
怖くて誰かに助けを求めたくても
それ以前に他の人には見えていない。
〝・・・見たくない、
私の前に現れないで・・・〟
その思いが強く、
見ない振りをして今まで生きてきた。
それが、
この町に来て一変するとは
予想打にもしなかったことだろう。
叔母に引き取られ
数年たったある日
叔母も病気を患い倒れ、
運ばれた病院でのこと。
「これは貴女の祖母に当たる方の遺品よ。
もし、私が帰ってこなかったとしても
貴方を守ってくれるはずだから
肌身離しちゃだめよ。」
そう言い終わるが早いか
〝友人帳〟と表紙に書かれた一冊の冊子が
ベッド脇のミニテーブルに置かれているのを指差し
さなに持たせた。
「 友人帳…?」
「さな・・・。
あとは、・・・宜しくね。」
「 おばさん・・・?おばさん!
駄目・・・!」
さなの疑問を聞いてか聞かずか
そう言い残し、叔母はさなの目の前で
ゆっくりと目を閉じ
さなの呼び掛けに応えること無く
静かに息を引き取った。
ー・・・そんなっ・・・!
私をひとりにしないで・・・。
そして、叔母の死後から数週間後
さなが叔母の遺品整理をしている中
遠い親戚と名乗る
スラッと背の高いスーツ姿の男性が訪ねてきた。
「 君がさなかな?
早く引越しの準備をしなさい。」
その男性は最低限の人物確認だけすると
さっさと荷物を運び出し
遠い町までさなを連れていった。
「・・・ここが、君の新しい家だよ。」
叔母の死に哀しみ暮れる暇も与えず、
あたかも誰の目にも触れさせないように
とも感じ取れるその男性の行動に
さなは為すすべもなく、ただ
〝新しい生活へと切り返して
生きて行くしかないんだね。〟
そう自分自身に言い聞かせるだけだった。