第9章 ◆的場一門
「 ・・・という訳で、
何故か的場さんの怪談話が
出回っているみたいなんだ、ニャンコ先生」
「 ・・・ふむ、実話 だな。」
家に帰るなり、
おやつの煎餅をバリバリと貪り
寛ぐニャンコ先生に
夏目は西村からの怪談話を簡単に伝えると
ニャンコ先生はそのままの感想を零した。
「 しかし、夏目
その話は随分と前の事だろう。
逸話として作られた物なら似過ぎている。
今更、誰がそんな話を吹き込んだのだ?
それも態々、・・・夏目の周りに。」
最後の1枚であった煎餅を飲み込むと
ジロリ、と夏目を横目で見ながら
ニャンコ先生は言う。
「 そうなんだ。
西村の兄さんの予備校で出回っている怪談話
としか聞かなかったけど、
予備校で出回っているとすれば
かなり範囲が狭いんだよ。
・・・何も無ければいいけれど。」
ーさなには特に接触させてはいけない。
・・・何故か本能的にそう察知した。
そんな落胆する夏目を横に
ニャンコ先生はお茶を飲み干し一息つく。
「 まぁ、
奴に限って前兆があるのは
今に始まったことじゃないがな。
私も面倒事は後免だぞ、夏目。」
「 俺だって、的場さんと関わる事は
出来るなら避けたいよ。
・・・あの人、手荒な事しかしないから。」
過去に何度も的場一門加入に
執拗く迫られた事がある夏目は
その事を思い出して、肩を震わせる。
「 はぁ・・・。」
「 ・・・用心するんだな、夏目。」
小さくため息を零す夏目に
簡単に注意を促すニャンコ先生。
「 ・・・って、
先生は用心棒だろうっ!」
座布団の上に寛ぐニャンコ先生に
夏目の拳が下されたのは言うまでもない。