第9章 ◆的場一門
そんな夕暮れの帰り道。
「 ・・・ってことだよ!分かるか夏目?!
片目男が、デケー妖怪を退治する振りして
その血を封印されてる妖怪にわざと飲ませて
封印を解いたんだ・・・!
悪どい上に力が最強で更に
どんな人間でも使おうとすれば
手段は選ばない奴・・・。」
そう言って顔を青くさせながら
夏目を見る西村。
あれから夏目は西村からの怪談話・・・いや、
長髪の片目番傘男の話を
くどい程に聞かされる羽目となった。
「 へぇ・・・。」
聞き覚えのある西村の怪談話とやらに
夏目は生返事で答えると西村は更に続ける。
「 ・・・・・・。」
ー・・・これ全部、
俺も関わってる話じゃないか。
・・・祓い屋内では有名な人物だけど、
一般人中では何で怪談話になっているんだ・・・?
この世の中に2人と居ないであろう、
至極特徴的なその人物と
今となっては怪談話となっている
夏目も関わっていた
的場との出会いの話に夏目は疑問を抱く。
そして、
「 それと、夏目。
この話を聞いた人は
その黒髪片目番傘男に
妖気を吸われるんだってさ・・・!
俺は霊感なんて無いけど、
夏目の前には現れるかもしんねーぞ?
その男が・・・!」
「 ・・・そ、そうか。
怖いな、はは。」
苦しい程に棒読みで
青い顔した西村の怖がらせ発言を
夏目は見事にスルーする。
「 ・・・それより、西村。
その話は何処で聞いたんだ?」
「 あぁ、昨日兄貴から聞かされたんだ。
兄貴の行ってる予備校で有名らしくって、
この話知ってないと女の子からモテない
なんて言うから、
聞かない訳には行かないだろ?」
一息置いて投げかける夏目の問い掛けに対して
さらっと答える西村の言い分は
きっと西村にしか分からないのだろう。
「 へ、へぇー・・・。」
女の子にモテる云々は関係あるのか。
そこにも疑問を抱いたが
それは夏目の中に仕舞い込む事にした。
ー・・・有名になったんだ、
的場さん・・・。
ふぅ、と小さく零す夏目の溜め息は
冬の夕暮れに白く残っては
ゆっくりと消えて行く。