第9章 ◆的場一門
「 ふぁーあ、ねみー。」
「 珍しいな、西村が居眠りなんて。
寝られないのか?」
放課後の教室にて、
欠伸ついでに目尻に涙を溜める西村を前に
夏目は整理された教科書を鞄に詰めていた。
「 いや、昨日ちょっとした
怪談話を聞いてなー?
それが、とびっきり怖くてさぁ!
夜も寝られなかったんだよー。」
思い出すだけで鳥肌が立つぜ!
そう言って大袈裟に両肩を抱く西村は
夏目の帰り支度を待つために座っていた
夏目の前の席から立ち上がり
震える素振りを見せる。
「 へぇー。
西村、そう言った話は
苦手なんじゃないのか?」
いつも、そういう話になると
顔を青くさせる西村の姿を思い出して
冷静に問い掛ける夏目は
帰り支度を終えて
鞄を肩にかけて西村の横に立つ。
「 不可抗力、ってやつ?
聞きたくないのに、聞かされたというか。
・・・あ、いや。
断じて、断じて!怖い訳じゃないぞ?」
「 へ、へぇー・・・。」
ー・・・さっき怖くて寝られなかった
って、言ったよな?西村・・・。
そんな夏目の疑問は口には出せず、
西村は先程言ったことも忘れて
身振り手振りで恐怖心をアピールする。
「 寝られない程の怖い話、か。
怖いもの見たさで、ちょっと気になるな。」
そう夏目がふっと笑えば
西村は一瞬固まり・・・、
「 夏目今、俺のこと
ビビリだと思っただろ?なぁ?
単に俺が怖がりすぎなんだって
思ったんだろー??
・・・なら、夏目にも話してやろうか?
すんごーく怖いから!
この、
長髪の片目番傘男の話っ!」
夏目の目の前に立って
人差し指を立てる西村に
夏目は目が点の状態でフリーズした。
「 え、
え、
ええええ?!
ちょ、長髪の・・・
片、目・・・
ば、番傘・・・おと、こ・・・???」
「 お!
ほーら、夏目でも食いついた!
タイトルですら怖いだろー?」
してやったりの顔で
ニヤニヤと笑う西村に
夏目は未だフリーズの状態である。
ー・・いや、そのタイトルの人物・・・
心当たりがありまくり!