第8章 ◆田沼ノ寺
・・・・・・
「うっ・・・。」
痛む頭を押さえ、
薄らと目を開ける夏目は
見慣れない天井を見渡した。
「 夏目ッ?!」
「 夏目先輩!」
聞きなれたその声に
夏目は寝ていた体を
ゆっくりと起こす。
「 ・・・大丈夫か?」
起き上がる夏目を支えながら
その表情を伺う田沼が
心配そうに問うと
「 ・・・あぁ、大丈夫だよ。」
次第に解けていく頭痛から
ハッキリと解放され
夏目は微笑み田沼を見据えて答えた。
その様子を
田沼とは反対側にいるさなが
不安げに見つめながら
「 ・・・夏目先輩、
無理しないでください。
・・・萩の記憶、
だったんですよね?」
恐る恐る夏目に問いかけた。
その不安げに見つめるさなの頭に
夏目は優しく手を乗せ微笑むと
「 いや、桔梗の記憶だ。
とても幸せそうで
・・・切ない記憶だった。
それ程レイコさんを想ってくれているのが
痛いくらい、よく分かったよ。」
・・・これで、報われると良いな。
そう付け加えて
夏目はさなの頭を優しく撫でる。
「 ・・・良かったです。」
夏目の姿に思わず
笑みがこぼれるさなと田沼。
「 あんまり無茶するなよ。」
ほっと一息つきながら
田沼は夏目を立たせた。
夏目は
周りを見渡しながら
「 萩は・・・?」
先程までこの部屋の大部分を占めていた
その姿を探す。
「 奴は、消えたぞ。」
夏目の前に
コロンと寝転がるニャンコ先生が
毛繕いをしながら夏目に告げた。
「 消えたって・・・」
「 奴は、桔梗の為に
その姿を保っていたようなものだ。
桔梗の名が返されたことが
奴の使命なのだろう。」
ニャンコ先生の言葉に
三人は一瞬言葉を失う。
しかし、
「 ・・・それが、
萩の本望なら
良かった、んですよね。」
さながそう呟くと
「 あぁ。」
「 ・・・ありがとう、二人とも。」
笑顔を向け肯定する夏目と
お礼を告げる田沼。
「 私にも礼がいるだろう!」
・・・と、
ニャンコ先生も
田沼に飛び付き
その話に加わった。