第8章 ◆田沼ノ寺
桔梗の申し出に一瞬目を見開き
驚くレイコはふうっとため息をつき
〝ふーん、
本当は勝負しなきゃ、
名前は貰わないんだけど・・・。〟
そう言って隅に置かれていた鞄から
冊子と筆を取り出す。
〝私が呼んだら来てよね?
お友達なんでしょ?〟
ツンとしながらも
冊子と筆を桔梗に渡した。
渡された桔梗は
〝アァ・・・。
約束、ダ。〟
笑顔で頷き、名前を書いた。
そして、書き終わり
その冊子をレイコに返すと
〝それと、
貴方もね!〟
レイコはそのまま横にいた萩にも
冊子と筆を手渡した。
〝え、えェ・・・。〟
いきなり冊子と筆を手渡され
戸惑う萩に
今度は桔梗がそっと寄り添う。
〝萩、オ前ハ
目ガ見エナイ ンダロウ。
私ガ 一緒ニ 書コウ。〟
そう言って筆を持つ萩の手に
桔梗の手が重なる。
〝・・・分かッタ。〟
抵抗すること無く
桔梗の動かす筆に
萩も手を合わせ、
筆で名を印していく。
その光景をひとり
無言で眺める住職は
ー・・・これは、
本当は禁術、と伺っておりますが・・・。
まぁ、お友達、ということなら
〝・・・大丈夫でしょう。〟
3人には気付かれないような
そんな小さな声で呟いたのだった。