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†夏目友人帳† ​~新友人帳物語~

第8章 ◆田沼ノ寺




その瞬間、

カタカタとツボが揺れ始める。



〝ナンダ…?!〟


ツボを持っていた妖は驚きのあまり

腕をピンと張り

自分の顔からツボを最大限に遠ざけた。



〝ほら、出ておいで。〟



驚く妖と住職を他所に

ニコニコと笑顔の少女は

数歩だけ下がりその様子を見ている。


そして、そのツボは

ピキピキと音をならせ

少しのヒビが入り

激しく揺れ始めた。



〝…っ!!〟


見てられない、と言わんばかりに

顔を背ける妖。


ツボからは黒い煙のようなものが

渦を巻きながら出始める。


〝おぉ、出てくるのですね。〟


住職がまたも感心しながら

手を合わせる。



その間にも

もくもくと煙が充満し、

その場に徐々に姿を作っていく。


そして、

ある程度の形が作られた後


パリン、と音を立てて

ツボが割れた。



〝ァ…。〟



ツボが割れた音に

小さく反応した妖は

背けていた顔をツボに戻し、

目の前に広がる真っ黒な煙を

目で追いながら唖然とした。



〝ほら、恥ずかしがらずに。 〟



その少女の声で

真っ黒だった煙は色を付け

妖の姿へと変貌していく。



そして、妖の姿に成りきった

直後


〝やはり、無理ダ…!〟


そう言って本棚の影へと逃げ

縮こまった。



〝もう、怖がりね。〟


ふぅ、とため息を漏らして

少女は本棚に隠れた妖を引っ張り

住職と妖の前に連れ出した。


〝この子は萩。

よろしくね。


・・・ええっと、

そういえば名前

まだ聞いてなかったわね。〟


貴方はなんてお名前なの?

そう笑って聞く少女へ


〝桔梗…。〟


妖は無意識に名乗っていた。



〝あら、良い名前ね!


ふたりとも、

仲良くなれそうな名前じゃない?〟



そう言って、

少女は萩を桔梗の横に立たせる。

萩と桔梗は戸惑いながら

お互いを見つめ、更に困惑し

そして少女へ視線を移した。


その行為に


〝息もぴったりのようですね。〟


住職もなぜか満足していた。


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