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†夏目友人帳† ​~新友人帳物語~

第8章 ◆田沼ノ寺




そうして、

住職と妖は殆ど会話を交わすことなく

各々、本棚を整理したり

読んでいる本の頁を進ませたり

静かに時を過ごしていた。


そして、

少女が部屋を出てから一時間程経った頃


階段を登るギシギシという独特の音が

小さく聞こえてきた。


〝…?〟


〝妖カ…?〟



住職が階段の方へと視線を送ると

妖も釣られて視線を送る。


〝妖の気配はありますね。〟


妖の問いに静かに答える住職。


徐々に近づくその足音に

住職は生唾を飲み込んだ。


そして、


静かに開けられる襖。


そこに立っていたのは








〝…ただいま。〟


ニコリと笑うさっきの少女だった。



〝あぁ、貴女でしたか。〟



その少女の姿に安堵した住職が

ほっと胸を撫で下ろす。



〝妖ハ居タノカ?〟



その横で妖が気になっていたことを

処女へ投げかけた。


少女は妖の方へ向き直ると



〝えぇ、居たわよ。

随分と暗いところに居たから

探すのに手間取っちゃったけど。〟



そう言って、小さなツボを取り出し

妖へと手渡した。



〝コレハ…壺?〟


手渡されたツボを

妖は色々な角度から眺めた。




そして、少女は



〝その中に居るわよ、妖。〟


そうニッコリと告げた。


その衝撃的な言葉に動きが止まる妖。

ゆっくりと、そして慎重に

手のひらの上にツボを置き直す。


〝まぁ、この中に…。

貴女が封印なさったのですか?〟


感心した住職が

少女へ驚きの表情を向けた。


〝いいえ、その妖は


目が見えないの。

明るさと暗さでしか視覚がないのよ。

だから、

明るさを好む人間から離れるために

暗いところに居続けたみたい。

その結果、自らその中に入って

落ち着いちゃったって訳。〟


ふふっと笑って

楽しそうに話す少女は

妖に手渡したツボの前にしゃがみ

ツボに話しかけるよう

小さな声で話し始める。


〝ねぇ、萩?

せっかくだから

お友達になったらどうかしら?



本を読んでくれるお友達よ。〟




そう言って、

少女はコンとツボを鳴らした。





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