第8章 ◆田沼ノ寺
〝ほら、謝って。〟
少女は優しく微笑む住職の前に
妖を突き出した。
そして、謝罪するよう促すと
腕を組みそっぽを向く。
〝ゴ、ゴメンナサ・・・ィ。〟
妖は促されるままに謝罪し、
住職の前で頭を下げた。
そして、食べかけていた本を
住職に差し出す。
〝いえいえ、
分かってくれたのなら良いのですよ。
私も、教えて差し上げたかったのですが
貴方の姿を確認すると
すぐに見えなくなってしまったものでして・・・。〟
差し出された本を受け取り
ハハハと笑いながら答える住職に
怒りや恐怖心は感じられない。
〝・・・。〟
妖が何も言えずに黙っていると
〝じゃー、
私が本の使い方教えてあげる。〟
妖の半歩後ろにいた少女が
ひとつの提案を出した。
〝本ノ・・・使イ方。〟
妖と住職の視線が少女へ向く。
少女の提案に対し、
ほほぅ・・・と住職が感心していると
妖は小さく呟く。
その姿を見て住職はまた
ニコリと微笑んだ。
〝それでしたら、
私の書斎を使うといい。
あなたは悪い妖では無さそうですしなぁ。〟
ホッホッホと笑いながら
住職の後ろに聳え立つ日本家屋の中へ
2人に入るよう、
住職は横へ捌け
二階へと続く階段を指さした。
〝えっ、いいんですか?〟
住職の優しさに少女は
少しだけ声のトーンを上げる。
その言葉に
どうぞ、と優しく答える住職に
少女は再び喜びの声を上げた。
〝じゃあ、お邪魔しますっ!
・・・ほら、行くわよ。〟
脱いだ靴を綺麗に並べ
妖の腕を取ると
そのまま二階へと足を進めた。