第8章 ◆田沼ノ寺
「 夏目!!」
田沼が夏目を呼ぶ声と同時に
ふわり、と夏目の体を覆う何か。
ー・・・?
疑問に思い目を開けた瞬間に
体に勢い良く来る衝撃。
「 夏目先輩ッ!」
そして、聞こえるのはさなの声。
その瞬間に突き飛ばされる夏目。
「 うわっ!」
友人帳を持っている為に上手く腕が使えず
夏目はそのまま肩から着地する。
痺れるような痛みが全身に回るが
それ所ではなく、直ぐに起き上がった。
「 ・・・さなッ?!」
先程まで夏目が居た場所へ目をやると
そこには夏目を突き飛ばした本人である
さながその場に蹲っていた。
「さなちゃん!」
夏目はさなの元へ思わず駆け寄ると
同時に田沼も横に跪いた。
「 さっき助けてくれたお礼です、
はやく、あの妖に名前を・・・。」
夏目がさなの上体を起こすと
さなは自らの力でその場に座る。
そして、夏目に対し少しだけ声を小さくし
妖に視線をやった。
「 あぁ、分かってるよ。
・・・田沼、さなを頼む。」
「 すまない、夏目。」
そう言って夏目が立ち上がると
田沼はさなの肩を支えて
妖から死角になる本棚の隅へと移動した。
「 くっ・・・」
その間にも本は次々と投げられている。
勢い良く投げられる本を避けながら
夏目は徐々に妖へと近づいて行った。
そして、本棚の本も残り僅かになった頃
「 き、ききょう、ききょ・・・ぅ!」
無我夢中に本を投げ続ける妖は
残りの本が少なくなっている事も気付かず
最後の一冊を投げ終わった時
「 っ?!・・・無イ、無イ・・・!!」
妖は狂気に晒され、怒りのままに
その場で暴れ出した。
そしてその長く持て余している腕が
夏目へと振り下ろされたその時
「 夏目!」
本棚の隅から見ていた田沼が叫ぶ。