第8章 ◆田沼ノ寺
パラパラ・・・
夏目が鞄から取り出した友人帳を捲った。
「 まったく、
随分と薄くなったものだ。」
原形の半分以下となった厚みの友人帳を前に
ニャンコ先生がため息混じりに呟く。
「き、ききょ・・・う。」
もはや、普通に会話することも難しく
ただ桔梗の名を呼び続ける妖。
「 我を守りし者よ
その名を示せ・・・。」
ニャンコ先生を含む4人の中で
1番妖との距離が近かった夏目が
その言葉を唱えた
その時だった、
妖の動きが止まり
細く長い両手を精一杯に広げる。
「 ・・・?」
妖のその行動に
その場に居た一同は動きを止め
妖に視線を集中させた。
その瞬間、
・・・ヒュッ!
妖の上げられた両腕は
書斎の本棚へと高速で伸び、
本を数冊掴むと
それを一気に投げ出した。
「 なっ?!」
いきなりの事に動きが追いつかず
降ってくる本から身を避ける為、
全員がその場で伏せる。
「 遂に、自我を失いよったか・・・。」
片目を瞑り、
妖により投げられる本から避けつつ
ニャンコ先生が話す。
「うっ、 先生、
なんとか出来ないのか・・・?!」
片腕で保身しながら
ニャンコ先生に問いかける夏目に
「 名を返すしか無いだろう・・・!
こいつはもう、桔梗を食うことしか
覚えておらん!
・・・夏目!」
ニャンコ先生が夏目の方へと視線をやると
数冊の本が一気に夏目に向かっていた。
その本が直撃するのを食い止めるには
既に間に合わず
ニャンコ先生は夏目の名を叫ぶ。
「 !!」
ー・・・まずい!
ニャンコ先生の声に夏目は
向かってくる本を確認するが
間に合わず、目を瞑った。