第8章 ◆田沼ノ寺
三人は暗い足取りのまま
例の書斎へ向かう。
「 …絶対に伝えないと。」
三人の中で
一番後ろを歩くさなが
ボソリと呟いた。
その小さな声に立ち止まり
振り返る夏目と田沼は
「…あぁ。」
「そうだな。」
しっかりとさなの意見に同意して微笑んだ。
ー…俺達人間には、
妖と違って寿命がある。
それによって、
祖母が亡くなった事を
哀しんでくれる妖とも出逢った。
桔梗がもし、そのうちの1人の妖ならば…
いや、
そうであって欲しい、と
俺は願わずにはいられなかった。
・・・そして、きっと
さなも同じ気持ちで
桔梗の友であるあの妖に
早く伝えたいのだろう、と。
三人は書斎に着くと中に入り、
「とりあえず、原因は分かった事だし
この本を片付けよう。」
夏目の提案と共に
三人はそれぞれ本を仕舞い始めた。
田沼には見えていない
桔梗の血液は静かに拭き取りながら。
「うむ、
手際の良いことだな。」
その三人の働きを
ニャンコ先生が欠伸をしながら傍観しつつ
無くなった本の場所は少し空けて
なんとか、散らばった全ての本を棚に戻した。
「 終わりましたね。」
「あぁ、ありがとう。
片付けまで手伝ってもらってしまったな。」
ふぅ、と一息つくさなに
田沼が礼を告げる。
「 そんなの、気にしないでください。」
申し訳なさそうにしている田沼に
さなは笑顔で答えると
「一人より、
三人で片付ける方が早いだろう、田沼。」
ニャンコ先生が寝転がりながら
田沼に向きを変えて話す。
「・・・って、
先生は寛ぎながら見ていただけだろう…!」
そんなニャンコ先生にすかさず突っ込む夏目。
その見慣れたやり取りに
田沼は少し安堵していた。