第8章 ◆田沼ノ寺
「夏目、
先程の妖。
ー…奴もかなり弱っている様だぞ。」
今までずっと黙って
着いてきていたニャンコ先生が
不意に夏目の肩から降りて話す。
「弱っているって…。
ニャンコ先生、
あの妖ももう長くないのか?」
ニャンコ先生の言葉に
夏目を始め、田沼とさなも
動きを止めてニャンコ先生へ
視線を注ぐ。
「あぁ、
私ほどの高貴な妖とは訳が違うからな。
妖とは元々、食事に興味は無いのだ。
桔梗という妖を一部取り入れたことで
知らずに寿命が付いたんだろう。
そしてそれ以来、
何も口にしておらんのだ。
自我を失い掛けた今、
桔梗の遺言だけに従って
動いているんだろう。」
ポトリ、と座布団の上に寛ぎながら
淡々と話すニャンコ先生。
その場に居た三人は
目を逸らす事なく
ニャンコ先生の言葉を聞いていた。
「あの妖も、もしかすると…」
少しの沈黙のあと
田沼が口を開く。
「 自分の寿命を分かってるのかも、
しれないですね...。」
その田沼と目が合ったさなが
田沼の言葉の続きを零した。
そして、三人共が目を合わせ
同時に頷くと
「とりあえず、書斎で待つとしよう。」
その夏目の声に全員が立ち上がり、
客間を後にした。