第8章 ◆田沼ノ寺
「そういう事か。
だから、その桔梗という妖と
さなが同じ匂い。。」
「 そうだと思います。
だからきっと…」
そこまで二人が話した時
外から足音が聞こえ
そのまま勢いよく襖が開かれた。
「持って来たぞ。
とりあえず、近くにあった物だけど
これでいいのか?」
少し厚めの紺色の本を片手に
息を切らせた田沼が入ってくる。
「 はいっ!ありがとうございます。」
さなは差し出され本を受け取ると
手早くパラパラと捲り始めた。
「…?」
その行動に田沼が目を凝らしていると
「っ!」
ひらり、と落ちる何かが
田沼にもぼんやりと感じられた。
「さな、それは…?」
「 たぶん、ですけど。」
畳の上に落ちたそれを
さなが拾い上げる。
「それは、何なんだ?
俺にはぼんやりとしか分からない。」
田沼が聞くとさなはそれを
掘り炬燵の机へと置いた。
「 これは、真っ白な羽です。
さっきの妖が食べたがっていた妖の羽。」
「羽?なぜそんなものが書斎の本に…。
俺は適当に持って来ただけだぞ?」
さなの言葉に田沼は首をかしげる。
「 きっと、書斎の本全てに
挟んであるんです。
私達に・・・見つけてもらう為に。」
「わたし、たち…?」
「 厳密に言うと
夏目レイコに、ですけど。」
田沼頭上にハテナマークが飛び交う中
さなは落ち着いた表情で
少し微笑みながら答えた。
「あぁ、俺たちの祖母だ。
怪我をした妖、いや桔梗という名の妖は
きっと祖母に接触している。
そこで祖母に会いたがっていたんだ。
でも命が尽きてしまった。
それを、あの妖が桔梗の一部を吸収した事で
きっとさなを会いたがっていた人物
ではなく、
全て吸収しなければいけない人物
と勘違いしたんだ。」
田沼に対し
夏目が話を続けた。
〝友人帳〟の名は出さずに。