第8章 ◆田沼ノ寺
「さて、と。
夏目、この後はどうするんだ?」
「あぁ、とりあえずさなが無事で
目の前に居ることが一安心だが、
さなを襲ってたあの妖と
あの血の妖の関係が気になる。
気配は似ていたけれど
同じ妖ではないようだったし・・・」
「じゃ、妖が増えたって事か。
それと同時に疑問点も増えたって事なんだな。」
さなが制服を整えていると
二人の打開策の無い話し合いが始まり
さなは妖との会話を思い出し
パッとその手を止める。
「 あの、その事なんですが。
私、さっきの妖から少し話を聞いたんです。」
二人の話の中に入り
さなが話しはじめる。
「えっ。」
「・・・そうか、
それなら先ず場所を変えようか。
此処じゃ
また襲ってくるかもしれないし。」
さなの発言に夏目と田沼は目を合わすと
田沼が急いで提案する。
「 田沼さん、お父さんの書斎にある本を
一冊、借りられますか?」
「? あ、あぁ、分かった。
持って来るよ。
夏目とさなちゃんは
奥の客間で待っていてくれ。」
さなのいきなりの頼み事に
理由は分からなかったが
きっと必要なものだと信用して頷き、
田沼は駆け足でその場を去っていった。
「さな、どういう事だ?」
田沼が走り去った方向とは逆の方向へ
夏目とさなは足を進ませ始めた。
そして、夏目が隣を歩くさなを
見下ろしながら問い掛ける。
「 あの妖は友達である桔梗という妖を
少し食べたって言ってました。
その桔梗さんとは、
ずっとある人を待っていたようで
でも、桔梗さんの命が終わる。消えてしまう。
そうなれば待ち人の気配がわからないから、と
桔梗さん本人から食べてくれって
あの妖は頼まれたそうなんです。」
「それで、書斎に血痕が・・・。」
さなの話を聞きながら
夏目は到着した客間の襖を開け
中にさなを通した。