第8章 ◆田沼ノ寺
「いや、俺に背負わせてくれ。夏目。
さなちゃんを危ない目に遭わせてしまったのも
そもそも俺が元凶なんだ。
見てるだけなんて出来る筈がないだろ。
・・・ほら、さなちゃんおいで。」
田沼はそう言って
再度、さなの前に後ろ向きでしゃがみ込む。
そんな姿を目の前に
夏目とさなは目を合わすと
少し微笑み、
「 じゃあ・・・、お願いします。」
さなは田沼の肩に手を置き
ゆっくりと体重をかけていった。
「気なんて使わないで
ドンと、乗ってくれて大丈夫だよ。」
恐る恐る乗られている感覚に
田沼が後ろを確認すると、
「 えっ、は、はい・・・。
すみません、お邪魔します・・・。」
既に足を浮かせて田沼の背中にしっかり
しがみつくさなと目が合った。
ー・・・あぁ、なるほど。
こんなにも軽ければ
夏目にも余裕で担げるって訳だ。
田沼は一人、心の中で納得し
そのままさなの膝裏に手を入れ込んで
目の前の階段を登り始めた。
「田沼、無理はするなよ。」
後ろから続く夏目の声に
「さなちゃんの軽さなら
階段くらい飛んで行けるぞ。」
田沼が冗談を交えながら受け流し
「 そんな・・・
そんな軽くない、ですよ・・・。」
さなが田沼の背中で頬を赤く染め
夏目と田沼が笑い合うと
ちょうど階段を登りきった。
「よ、っと。」
階段を登りきった先には襖があり
そこを開け中に入ると
田沼は背中に乗せていたさなを
ゆっくりと降ろす。
「 田沼さん、ありがとうございます。
助かりました・・・。」
未だに薄らと頬を染めたままのさなが
立ち上がる田沼を見上げながら礼を告げる。
「礼を言われるまでもないさ。
歩くのがしんどかったらいつでも言ってくれ。」
田沼はニコリと笑うとさなの頭に手を置き
スッと優しく撫でた。