第8章 ◆田沼ノ寺
・・・この声・・・ッ。
さなには聞き慣れた二人の声
重なるその声が、共にさなの耳に届く
その時、
「なッ?!」
目を背けるほどの光が真っ暗なその場を照らした。
その光によって思わず
さなから手を離した妖は
その光の力に当てられ
数メートル離れた土壁へと飛ばされる。
「さな!大丈夫か?」
妖が離れたその隙に駆け寄る二つの声。
光のお陰か、さなは
薄れかけていた意識を完全に戻し
両の手首に繋がれているロープを
外してくれる人物に目を向けた。
「 ゲホッ・・・!
な、夏目先輩、田沼さん・・・。」
「さな、間に合って良かった。
早く、此処から離れるぞ!」
ふらっと崩れるさなを夏目が受け止め
声を掛けると田沼と2人で
覚束無いさなを支えてその場を去る。
「ニャンコ先生!」
後ろを振り返り、
伸びている妖の側で
いつもの姿に戻ったばかりの
ニャンコ先生へ夏目が呼びかける。
「分かっている!」
少し伸びをしてから
駆け足で3人の後に付き
そのまま夏目の肩へ飛び乗るニャンコ先生。
それを見ていたさなは
「 ニャンコ先生・・・、ありがとう。
帰ったら、うどんでも奢ります・・・ね。」
そう力無く笑って話し掛けると
「夏目と違って、小聡明い奴だなお前は。
ふん、大盛りでまけてやろう。」
ニャンコ先生は
満更でもない様子で落ち着いた。
そうこうしている間に
幅の狭い簡易な上り階段へと到着する。
夏目と田沼の間で
二人に支えられている状態のさな。
あまりにも狭い為に
三人が1度に通る事は不可能だった。
その為、
「さなちゃん、
俺の肩に掴まれる?」
さなを離し、
さなの前にしゃがみ込んだ田沼が
後ろを向きながらニッコリと微笑む。
「 へ?・・・いや、そんな。
階段くらい平気で・・・」
「そうだぞ、田沼。
さなくらい俺だって背負えるんだ。」
「 えぇっ」
田沼の提案に戸惑いながらも
さなは断ろうとするが、
違う方向から夏目が食い気味に意見を言う。