第8章 ◆田沼ノ寺
ぬぅっと、
徐々に姿を現す細腕の妖。
音も立てず
「・・・ユックリ、食べル。
お前、堪能すル為にコノ洞窟来た。」
今にも砕けてしまいそうな程
細く長いその腕は
さなの体に巻き付いたまま
少し愉しそうな話し方で
さなの前へと移動する。
「 …ッ。」
ー…何だか、悪趣味な妖。
口を塞がれ
何も発せないさなは
妖に視線だけを鋭く刺しながら
心の中で呟いた。
「怖くナイ?
人間の癖ニ、怖がらナイ?」
ふと、さなの視線に気付いた妖が
さなの顔を覗き込むように
自分の顔を横にさせて近付く。
それと同時にさなの口を塞いでいた腕を
するり、と離した。
それによって少し表情を和らげたさなは
「 …怖くは、ないよ。」
そう前置きをして、
「 只、一つ気になる事があるの。
貴方が食べたがってる桔梗という妖は
貴方と一体どういう関係なの?」
そう続けた。