第8章 ◆田沼ノ寺
・・・さなの手を離さないって
一緒に来るべきだった、俺の失態だ。
「さなが…連れてかれたのも
俺の…」
夏目は床に転がるお茶の缶を拾う。
「…っ。」
自暴自棄になっている夏目を
目の当たりにしている田沼が
グッと拳を握り、夏目の前に立ちはだかって
夏目の両肩を掴み台所の壁に押し当てた。
「っ!…田沼?」
「夏目、しっかりしろ!
今は後悔するよりも、さなちゃんを探すのが先決だろう?
そもそも、俺が依頼しなければ
こんなことにはなっていなかったんだ。
俺だって、夏目やさなちゃんに迷惑かけているし
その後悔を出したところで解決には繋がらない。
こうなった以上は絶対にさなちゃんを助けたい。
それには、どうしても夏目の力が必要なんだ。
だから、協力してくれ!夏目。」
田沼の言葉に夏目は言葉を無くし、唖然とした。
「田沼…、そう、だよな。」
夏目が深く何度も頷く。
「ありがとう、田沼。
…すぐに、さなを探さないと。
もう一度、書斎に行こう。」
夏目の真剣味のある言葉に
田沼が夏目を掴んでいた手を離すと
少しだけ表情を緩めた。
「あぁ、絶対にさなちゃんを助け出さないと
俺は夏目に殺されてしまいそうだ。」
「なんだ、それ。」
田沼の冗談を夏目は軽く受けながら
そう言って二人は書斎へと走り出した。
…さな、絶対に助けに行くから
それまで無事でいてくれ。