第8章 ◆田沼ノ寺
ー・・・ッ!聞くしかない・・・よね・・・ッ!
「 血の ・・・妖・・・は・・・?」
妖の腕によりキツく締め付けられるもさなは
田沼の父の書斎で見た妖の血について
所々、途切れながらも必死に問いかけた。
そのさなの言葉に妖はまたも
さなの耳元でフゥと息を吐くと
ゆっくり、話し始める。
「アレ、桔梗(キキョウ)の血。
オレ・・・桔梗探してル。
オレ・・・桔梗食ベタカッタ、
デモ・・・逃げラレタ。
ダカラ、お前でイイ。
お前モ桔梗ト同じニオイスル、旨そウ。
食べサセテ。食べサセテ。」
ー・・・き、きょ・・・う、?
同じ、ニオイって・・・
ぅ、ダメ・・・、意識が・・・。
さなはそこまで考えると
ミシミシと体がどんどん絞められていく現状に
思考よりも体が悲鳴を上げる。
「 は、な・・・して・・・。」
声にならない言葉を必死に出すも
妖の腕の力は緩むことなく
さなの体をギシギシと締め上げる。
「オレ、質問答えタ。
お前、食べル。」
視界がぼやけ、意識が朦朧とし始めたさなに
抵抗していた力も抜けると
妖は少し声のトーンを上げて嬉しそうに呟く。
ー・・・夏目、先輩・・・。
ふと、脳裏に過る夏目に助けと
謝罪の念を向けながらも
体からは完全に力が抜ける。
「・・・オイデ、オレ の部屋ニ。」
ふわり、と体が浮遊する感覚に陥った瞬間
さなはそこで意識を手放した。
・・・夏目先輩、ごめんなさい。
さなの手から落ちた筒状のお茶の缶が
カラン、と音を立てて床に転がった。